ドイツ薬学視察レポート22015年02月24日 16:47

昨年12月1日から6日間ドイツ薬学視察旅行に行きました。
今回の視察では、それぞれの特徴ある薬局5店舗と老人施設が1件ありました。その中には日本人の経営する薬局も含まれていました。この時期のドイツは、クリスマスムードでいっぱいでした。街中いたるところでクリスマスの飾りがあり、夜はクリスマスマーケットで盛り上がっていました。薬局のショーウィンドウも個性ある飾りで彩られていました。

さて、当薬局では3年前にも小西が視察を行い、今後の日本の薬局の目指すものがあると感じておりました。この時の報告は、大阪府薬雑誌に寄稿しているのでそちらもご覧ください。(2012.Vol 63)
2011年のトピックスにも掲載

ドイツでは、かかりつけ薬局がまだ多く存在していますが、それには地理・歴史・政治など色々な条件が揃っているようです。法律的には薬局の開局は薬剤師しか出来ず、他の資本が認められていません。そして最近まで1薬剤師1店舗しか開局出来なかったそうですが、最近は少し緩和され1人4店舗までとなっています。また、チェーン店舗はほとんどなく各自が個性ある薬局を開業しています。ドイツ人は、完全個人主義で、お客さんに喜んでもらうといった日本人とは違い、自分のために働く人が多く、自分のやり方で薬局経営をおこなうため、個性があります。


調剤専門の薬局はなく、化粧品・サプリメント・ハーブ・ホメオパシーなどを取り扱っています。
基本的プライバシー保護の個室が用意されており、そこで血圧・血糖測定も行っています。お店によっては、お金を取るところもありますが、顧客の健康管理のツールとして使い、無料でサービスしているところが多いようです。異常があると、受診勧奨を行っています。またその部屋では、個別の相談・オムツや弾性ストッキングの試着など出来るようになっています。

ドイツでの薬局のイメージは、ウェルネス最先端・町の科学情報相談所・オーダーメイドの良さ・量販店と区別されて置いている物にはブランド力がある、と言うものです。お店に入って来る人は、薬をもらいに来るだけはでなく、例えば、子供むけに、遊具があったり、年齢に応じたメーカーの無料の雑誌が置かれているなど楽しみに来る感じです。

ドイツでも2004年よりネット販売が行われていますが、全OTCの 11~12%ぐらいであり、ネットで注文する患者はそれ程広がっていないようです。値段は確かに安いのですが最低注文金額があったり、送料がかかったり、配達も72時間以内に届けばいいので、それ程利用されていないようです。人々も「薬は必要だから購入する・安価だから購入するのではない」と考えているようです。また、ネットでは、情報が多すぎて絞れない、まずは薬局で聞くほうが確かで安全だと、信頼されているようです。

メーカー・卸のバックアップや流通システムが非常に充実しており、薬局へのアクセスが良いこと、商品・医薬品が1日4~5回納品され、品揃えが良く、OTC一つからでも配達してくれるため、薬局の品揃え=卸の品揃えとなっていて充実しています。

薬局のスタッフは、薬剤師・PTA(薬学技術アシスタント)・PKA(薬学商業従事者)・掃除・配達員などがいて、それぞれの仕事分担がはっきりしています。PTAの業務内容は薬剤師とほぼ同じですが、責任ある仕事は出来ません。PKAは、主に医薬品の発注・在庫管理などを行っています。 薬局の業務が煩雑になり、また利益も減ってきているので、薬剤師の60%ぐらいの給料ですむPTAを雇うところが増えてきているのが実状です。
逆にPKAはIT技術の進歩で減少傾向にあります。日本でも、調剤助手導入の議論もありますが、慎重に考えて欲しいと思います。 それでも閉店する薬局が増えており、数年後には20000件を切るだろうと言われています。ドイツでも、小さい薬局が減り、大きい薬局が増えています。

ドイツでは、1240年より完全医薬分業が行われています。基本、箱だし調剤が行われています。調合と言えば、軟膏の混合や、散剤・DS剤がほとんどないため、子供の薬を必要量カプセルに入れることがほとんどです。

調剤の流れは、一枚の処方箋には、3剤までの記載が出来て、スキャナーで入力が出来ます。平均薬品数は1.5種類と少ないです。自動ピッキングマシーンがあると、処方入力後すぐに数秒で払い出しされてきます。薬歴はないが、各薬局で患者カードを製作し、服用歴・OTC購入履歴などの管理をしています。
薬の説明も行いますが、基本、箱だし調剤で添付文章が付属しているので、患者は添付文書を自分で読む義務があり、自己責任で服用することになります。調剤に時間をかけている、日本の薬局とは随分違うところです。



ドイツの医療費削減の一部として、医師のキャップ制(医師が使える保険料の上限が決まっている)を取っていることがあげられます。そのため診療所は、あまり看板などで宣伝せず、開業時間も短いです。またジェネリック医薬品の使用を推奨しています。ジェネリック医薬品については、品質の悪いものが外国より入ってくるので、各薬局が品質検査を行う施設を備えており、日々の業務で行っています。薬剤師が品質を守るという意識が強いようです。

今後の薬局・薬剤師の問題点として、日本人薬剤師のアッセンハイマー 慶子さんは「薬剤師の勉強量・スキル・モラルの必要性。作業効率のUP、スタッフの教育。国民に対してのアピールの大切さ。薬局に不利な発言には薬局で連携して躊躇なく抗議できる、物言う薬局だと言われていました。

「かかりつけ薬局」、ドイツも日本の薬局も直面している状況、今後の展望など共通する問題が多いようです。 特に最近の日本の薬局は、調剤に重きを置きすぎた事が問題だと思います。昔の町の薬局と言うことがさかんに言われていますが、患者に信頼され、何度でも気軽にきてもらえるそういう愛着ある薬局を目指したいです。

西淀川区薬剤師会 神田

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